社内から『在庫の状況を見たい』『在庫圧縮の資料がほしい』と言われたとき、総務や経理がデータ作成に関わることがあります。基幹ソフトからデータは出せても、どの切り口で見ればよいか迷う場面です。
こうした資料作成では、AIエージェントが役に立ちます。計算式を細かく命令するより、何を判断したいのか、どんな行動につなげたいのかを伝えると、資料の切り口を整理しやすくなります。
この記事の要点
- 在庫データを整えすぎる前に、目的と見たい期間をAIへ伝えて切り口を出させます。
- 回転率の計算だけでなく、長期滞留・急な変化・確認すべき商品を分けます。
- AIの提案は元データへ戻って検証し、費用対効果と現場条件を添えて報告します。
この記事の役割
AIエージェントを在庫回転率の集計・資料化へ使う具体例です。
基幹ソフトから出したデータを整え、経営層と現場で見せ方を変え、人が数字の意味を判断する流れを扱います。汎用的な依頼文の作り方は、AIエージェントへの頼み方で整理しています。

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最初に決めるのは、何を判断したいか
在庫回転率の資料を作るとき、最初に考えるのは計算式ではありません。会社として見たいのは、在庫が多すぎる商品なのか、動いていない商品なのか、発注量を見直すべき商品なのかです。目的が曖昧だと、AIに渡してもきれいな表ができるだけで終わります。
AIエージェントには、データ処理の方法より先に、資料を使って何を決めたいかを伝えます。これができると、AI側から分析の切り口が返ってきやすくなります。
基幹ソフトから出すデータをそろえる
在庫分析では、売上、仕入、在庫数、商品コード、商品名、期間などのデータが必要になります。基幹ソフトから一度にすべて出せるとは限らないため、複数のCSVやExcelを組み合わせることもあります。
| データ | 見る目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 商品コード | 同じ商品を識別する | 商品名だけに頼らない |
| 商品名 | 社内で内容を確認する | 表記揺れが起きる |
| 期間売上数 | どれだけ動いたか見る | 対象期間をそろえる |
| 期首・期末在庫 | 平均在庫を考える | 棚卸時点に注意する |
| 仕入単価・金額 | 在庫金額を見る | 税抜税込を混ぜない |
AIには目的、データ、出力イメージを渡す
AIエージェントに頼むときは、『在庫回転率を出して』だけでは不足します。どのデータを使うのか、何を判断したいのか、どんな表にしたいのかを伝えます。
たとえば『在庫圧縮のため、動きが遅い商品を見つけたい。基幹ソフトから出した商品別売上数、在庫数、在庫金額を使い、優先順位を付けた一覧にしてほしい』という頼み方です。

細かく指示しすぎると、よい切り口を逃す
非エンジニア総務がAIエージェントを使うとき、すべての計算手順を細かく指定しようとすると、かえって難しくなります。こちらが思いついていない分析軸をAIが提案してくれることもあります。
重要なのは、目的と制約を示すことです。『在庫圧縮に使いたい』『経営層に見せたい』『現場が見ても分かる表にしたい』『商品名の表記揺れに注意してほしい』などを伝えると、資料の形が実務に近づきます。
AIが作った資料は、意味を人が読む
AIが在庫回転率やランキングを作っても、その結果をそのまま採用してよいわけではありません。季節商品、キャンペーン商品、取引先都合の商品、欠品を避けるために多めに持つ商品など、数字だけでは判断できない事情があります。
ここで一人総務の横断的な視点が役に立ちます。経理の数字だけでなく、営業や現場の事情、仕入先との関係、会社の方針を合わせて見ることで、資料が単なる表ではなく判断材料になります。
数字が悪い商品ほど、理由の確認が必要
回転率が低い商品を見つけると、すぐに削減候補に見えます。しかし実務では、欠品すると困る定番商品、特定顧客向けに持っている商品、季節前に積んでいる商品などがあります。数字だけを見て判断すると、現場から反発が出ることもあります。
AIには、回転率が低い商品を出してもらうだけでなく、『理由確認が必要な商品』として分類させると使いやすくなります。たとえば、金額が大きい、長期間動きがない、直近で仕入だけ増えている、といった条件で分けると、現場ヒアリングの優先順位が見えます。
見せ方は、経営層と現場で変える
同じ在庫データでも、社長や管理職が見たい情報と、現場担当者が見たい情報は違います。経営層には金額影響や優先順位、現場には対象商品と具体的な次の対応が必要です。
| 相手 | 見せる内容 | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 社長・管理職 | 在庫金額、優先順位、改善余地 | 細かすぎる商品一覧だけを出す |
| 営業 | 動きが遅い商品、販売提案候補 | 経理用語だけで説明する |
| 仕入担当 | 発注量見直し候補 | 理由なしに削減だけ求める |
| 総務経理 | データの根拠と更新手順 | 一回限りの資料にする |
AI資料を社内会議に出す前に確認すること
AIが作った資料を社内会議に出すときは、見た目のきれいさよりも、説明できるかを確認します。どのデータを使ったのか、対象期間はいつか、除外した商品はあるか、計算の前提は何か。ここを答えられないと、資料への信頼が下がります。
特に在庫は、営業、仕入、倉庫、経理で見方が変わります。会議では『この数字が正しいか』だけでなく、『この数字をもとに誰が何をするか』まで決める必要があります。AI資料は、その話し合いを始めるための地図として使うと実務に合います。
| 会議前の確認 | 見る理由 |
|---|---|
| 対象期間 | 季節性や一時要因を見落とさない |
| 除外条件 | 特殊商品を混ぜない |
| 金額基準 | 影響の大きい順に見る |
| 次の担当 | 資料を行動につなげる |
表記揺れと例外を残す
商品名や取引先名は、基幹ソフトと外部資料で完全一致しないことがあります。AIがうまく合わせたとしても、次回も同じように処理できるよう、揺れの対応を残しておくことが大切です。
在庫分析は一回だけで終わるより、毎月、四半期、決算前などに繰り返して意味が出ます。処理したルールや迷った点を残すことで、次回の資料作成が速くなります。
次回のために、AIへの依頼文も残す
在庫資料がうまく作れたら、AIへの依頼文も残しておきます。どのCSVを使ったか、どの列を見たか、どの条件でランキングしたか、どの表を出したかを残すと、次回はゼロから考えなくて済みます。
少人数総務では、作業の属人化を完全になくすのは難しいですが、依頼文と確認手順を残すだけでも再現性が上がります。AIを使った作業ほど、うまくいった指示を会社の資産として残す意識が大切です。
毎月同じ形で出すと、変化が見える
在庫回転率の資料は、一度作って終わりにするより、同じ形で繰り返す方が効果が出ます。毎月同じ項目、同じ集計期間、同じ並びで出せば、前月から何が変わったかを見られます。
一回限りの分析では、『今そう見える』だけで終わります。継続して見ると、改善した商品、悪化した商品、発注方法を変えた影響、季節要因が見えてきます。AIエージェントには、前回の資料と今回の資料を比較させ、変化が大きい商品を出させることもできます。
| 継続して見る項目 | 分かること | 次の行動 |
|---|---|---|
| 回転率の悪化 | 動きが鈍くなった商品 | 発注量や販売提案を確認 |
| 在庫金額の増加 | 資金が寝ている商品 | 仕入予定を見直す |
| 急な売上増 | 欠品リスク | 発注タイミングを確認 |
| 長期滞留 | 処分や販促の候補 | 現場に理由を確認 |
ここでも重要なのは、AIに判断を丸投げしないことです。変化が大きい商品を見つけるところまではAIが得意ですが、その理由は現場に聞かないと分からないことがあります。資料は、現場と話すための入口として使います。
元データをきれいにしすぎる前に、現実の癖を見る
データ分析をしようとすると、最初にデータを完璧に整えたくなります。しかし中小企業の基幹ソフトデータには、商品名の省略、古いコード、担当者ごとの入力癖、例外的な取引が残っていることがあります。そこを見ずにきれいな表だけ作ると、現場感から離れます。
AIエージェントには、整っていない部分も含めて見せる価値があります。表記揺れ、空欄、極端な数値、分類しづらい商品を一覧化させれば、分析前に直すべきデータの癖が分かります。データをきれいにすること自体も、業務改善の一部です。
| データの癖 | 起きる問題 | AIに頼めること |
|---|---|---|
| 商品名の省略 | 同じ商品を別物として見る | 似ている商品名の候補出し |
| 古いコード | 現在の商品とつながらない | 使われていないコードの抽出 |
| 空欄 | 集計から漏れる | 空欄行の一覧化 |
| 極端な数値 | ランキングが歪む | 外れ値の確認候補出し |
現場に聞くための資料として作る
在庫資料は、総務経理だけで完結するものではありません。数字を見て疑問が出たら、営業、仕入、倉庫などに確認します。そのとき、AIが作った表をそのまま見せるより、『確認したい商品』『聞きたい理由』『想定される対応』まで整理した方が話が早くなります。
一人総務が資料を作る価値は、数字を出すことだけではありません。数字を社内の会話につなげ、次の行動に変えるところにあります。AIはその準備を助ける道具として使うのが自然です。
在庫の話は、経理だけで完結しません。数字をきっかけに、営業、仕入、倉庫が同じ画面を見て話せるようにすることが、資料作成の本当の価値です。
在庫分析は、作成時間より判断材料を増やせるかで見る
在庫回転率の資料化では、表をきれいに作ることだけが目的ではありません。基幹ソフトのデータをもとに、どの商品を見直すべきか、どこに在庫圧縮の余地があるかを早く見つけることが大切です。
| 確認する指標 | AIに任せやすい部分 | 人が判断する部分 |
|---|---|---|
| 在庫回転率 | 商品ごとの回転状況を一覧化する | 本当に減らしてよい在庫かを判断する |
| 滞留期間 | 長く動いていない商品を抽出する | 季節性や取引先事情を加味する |
| 仕入・販売の推移 | 月別の増減をグラフ化する | 値上げ、欠品、特売の影響を読む |
| 改善候補 | 見直し対象のたたき台を出す | 社内で実行する優先順位を決める |
AIで短縮したいのは、表を作る時間だけではなく、見るべき論点にたどり着くまでの時間です。資料のたたき台を早く作れると、総務経理は数字の意味を読む方に時間を使えます。
改善提案にするなら、費用対効果まで添える
在庫分析は、数字を出すだけでは社内で動きにくいことがあります。提案にするなら、在庫金額がどのくらい減る可能性があるのか、保管スペースや資金繰りにどんな影響があるのか、発注方法を変えるとどんなリスクがあるのかまで整理します。
ここでもAIエージェントは使えます。回転率の悪い商品を出すだけでなく、『改善効果を説明する表にして』『社長向けに要点をまとめて』『現場へ確認すべき質問を作って』と頼むと、資料が社内提案に近づきます。
| 提案に足す視点 | 確認すること |
|---|---|
| 金額影響 | 在庫金額がどれだけ大きいか |
| 業務影響 | 発注や倉庫作業がどう変わるか |
| 販売影響 | 欠品や顧客対応に問題が出ないか |
| 実行方法 | 誰がいつ確認するか |
Excelは、見る人の役割ごとにシートを分ける
在庫分析を社内へ渡すとき、全員に同じ一覧を見せると必要な情報を探しにくくなります。実務では、前期末と前々期末の比較を土台にしながら、入力、経営判断、確認、詳細のシートを分ける設計にしました。
| シート | 主な利用者 | 見せる内容 |
|---|---|---|
| 入力用 | データ準備担当 | 基幹ソフトから出した元データ、対応表 |
| 経営用 | 社長・管理職 | 金額影響、優先順位、前年差 |
| 確認用 | 現場責任者 | 理由を確認したい商品、次の対応 |
| 詳細用 | 分析担当 | 商品別明細、計算根拠、例外 |
もう一つ大切なのは、資料だけを渡して終わらせないことです。現場が「この商品はなぜ対象か」「前年との差はどこから出たか」とAIへ聞けるよう、成果物と質問の入口をセットにします。資料を読む人が自分で理由をたどれると、総務へ問い合わせが集中しにくくなります。
実務チェックリスト
- 資料の目的を先に決めたか
- 対象期間をそろえたか
- 商品コードと商品名を両方使ったか
- AIが作った分類を人が確認したか
- 季節商品や例外を別扱いにしたか
- 次回も使えるルールを残したか
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よくある質問
- Q在庫回転率の計算式まで自分で詳しく知る必要がありますか?
- A
最低限の考え方は知っておく必要があります。ただし、最初から専門的な分析を完璧にするより、何を判断したいかを明確にしてAIに案を作らせ、人が確認する形が現実的です。
- QAIが出したランキングはそのまま使えますか?
- A
そのまま決定には使いません。季節性、欠品リスク、取引先事情など、数字だけでは分からない事情があります。ランキングは確認すべき候補として扱います。
- Q非エンジニアでも在庫分析資料を作れますか?
- A
作れます。基幹ソフトのデータを出し、目的と見たい切り口をAIに伝えれば、資料案は作れます。最終的に意味を読み取り、社内で使える形に整えるのが人の役割です。
まとめ
在庫回転率をAIエージェントで資料化するときは、計算だけを任せるのではなく、目的、データ、判断軸を渡します。AIは切り口を出すのが得意ですが、数字の意味を会社の実務に合わせて読むのは人の仕事です。
一人総務・少人数総務は、経理、システム、現場の情報を横断して見られます。その強みを使えば、AIが作った資料を会社の判断に使える形へ近づけられます。


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