基幹システム改修の現場ヒアリング。総務が質問を噛み砕いて要件にする方法

基幹システム改修で現場ヒアリングを成功させる。総務が質問を噛み砕く理由の内容を示すアイキャッチ 情シス・業務改善

基幹システム改修では、現場ヒアリングが欠かせません。ただし、現場の担当者にとってヒアリングは通常業務に追加される仕事です。聞き方を間違えると、協力してもらう前に負担感が強くなります。

一人総務・少人数総務が中に入る価値は、ここにあります。システム会社からの質問をそのまま渡すのではなく、現場が答えやすい形に噛み砕くことで、必要な情報が集まりやすくなります。

この記事を書いた人

一人総務・少人数総務として15年以上、現在は約50名規模の会社で管理職として、総務・経理・情シス・庶務・労務・社内調整を横断して担当しています。基幹システム改修の現場ヒアリングについて、非エンジニアの実務担当者として試したことをもとに整理しています。

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この記事の要点

  • 先入観なく実際の作業順を聞き、担当者が普段止まる場面まで確認します。
  • 専門用語を避け、現場の言葉をシステム会社へ渡せる要件に整理します。
  • 要件化した内容を現場へ戻し、理解のずれを本番前に修正します。
現場ヒアリングの内容をシステム会社に伝わる形へ整理する一人総務のイメージ
現場の言葉をそのまま渡すのではなく、相手に伝わる形へ噛み砕くことが改修を前に進めます。

現場ヒアリングは、相手にとって追加の仕事になる

システム改修を進める側は、必要な情報を集めたいと思っています。しかし、現場側から見ると、いつもの仕事に質問対応が追加されます。忙しい時期であれば、協力したくても時間が取れないこともあります。

だからこそ、質問の投げ方が大切です。『システム会社から聞かれたので教えてください』ではなく、『今の作業で一番手間がかかっているところを確認したいです』のように、相手の仕事に沿った聞き方へ変えます。

NOTE

質問を噛み砕く

現場に聞く前に、なぜその情報が必要なのかを総務側で理解しておくと、質問が短く、答えやすくなります。

最初は、何を良くしたいのかを聞く

いきなり細かい入力項目や画面仕様を聞くと、話が狭くなります。最初は、何に困っているのか、何が減ると助かるのか、どこでミスが起きやすいのかを聞きます。

この段階では、現場の言葉をそのまま受け止めます。まだ実現可能かどうかを判断しすぎない方が、困りごとの本質が見えやすくなります。

現場の要望を、業務の流れに戻して考える

現場から出てくる要望は、画面のボタン、表示順、警告条件など具体的な形で出ることがあります。しかし、その奥には『探す時間を減らしたい』『入力ミスを防ぎたい』『確認漏れをなくしたい』という目的があります。

要望をそのまま機能名にせず、業務のどの場面で何を防ぎたいのかに戻して整理すると、システム会社にも伝わりやすくなります。

現場の言葉総務が確認すること要件に直す視点
ここを上に出したいどの作業で探しているのか表示順で時間を減らす
警告を出してほしい何を見落とすと困るのかミス防止条件を作る
入力を減らしたい同じ情報をどこで使っているか連携や自動反映を検討する

システム会社へは、現場の声と整理した案を一緒に渡す

現場の声をそのまま投げるだけでは、システム会社側も判断に迷います。逆に、総務が勝手に案だけ作ると、現場の意図から外れる可能性があります。

実務では、現場の発言と、総務側で整理した案をセットで渡すのがよいです。『現場ではこう言っています。目的は入力ミス防止です。条件としてはこのあたりが考えられます』という形です。

画面が開くか、誰に起きているか、業務が止まっているかを分岐で確認する図解
質問を枝分かれにすると、知識が少ない人でも確認しやすい。

テストしながら追加項目を調整する

システム改修は、最初のヒアリングだけで完成しません。実際に入れて、テストして、想定と違うところを直していく流れになります。

このとき、現場には『まだ調整中であること』を伝えておくと、意見を出してもらいやすくなります。完成品を一方的に渡すのではなく、途中で一緒に確認することで、後からの不満も減らせます。

現場の不満は、変えたい気持ちの裏返しでもある

ヒアリングでは、意見が強く出ることがあります。総務としては受け止めるのが大変ですが、それだけ今の仕事を良くしたい気持ちがあるとも言えます。

もちろん、すべてをそのまま実現できるわけではありません。それでも、まず聞く姿勢を見せることで、現場との信頼関係は残りやすくなります。強い意見を、単なる不満ではなく改善材料として扱うことが大切です。

聞いた内容は、後から見返せる形にする

ヒアリング内容は、口頭だけで終わらせない方がよいです。メール、チャット、メモ、議事録として残しておくと、後から『なぜこの仕様にしたのか』を確認できます。

システム改修は長くなるほど、最初の目的を忘れやすくなります。記録が残っていれば、社長への報告、システム会社との調整、現場への説明にも使えます。

ヒアリング前に、総務側で仮説を持っておく

現場に話を聞く前に、総務側である程度の仮説を持っておくと質問が具体的になります。どの入力に時間がかかっていそうか、どの帳票で確認が重なっていそうか、どの部署に影響しそうかを考えておきます。

ただし、仮説を押しつけてはいけません。現場の話を聞いて違っていれば修正します。先入観なく聞くことと、何も考えずに聞くことは違います。準備したうえで、相手の言葉に合わせて組み替えます。

質問は一度に詰め込みすぎない

システム改修の確認事項は多くなりがちです。画面、帳票、入力項目、例外処理、チェック条件、権限設定など、聞きたいことを並べると現場の負担が大きくなります。

一度のヒアリングでは、目的に直結する論点を絞った方がよいです。必要であれば、最初は困りごと、次に画面、最後に例外処理というように段階を分けます。段階を分けると、現場側も考えを整理しやすくなります。

現場のいつもの工夫を聞き出す

現場には、システムに出てこない工夫があります。メモを残している、別表で確認している、特定の順番で処理している、ベテランだけが見ているポイントがある。こうした工夫は、改修要件の材料になります。

特に、ミスを防ぐために人が見ているポイントは重要です。そこをシステムで警告できるのか、人の確認として残すのかを考えると、現場の品質を落とさずに効率化しやすくなります。

システム会社への説明は、事実と要望を分ける

システム会社へ伝えるときは、現場で起きている事実と、現場が望んでいる要望を分けます。事実は『この画面で二重入力している』、要望は『自動反映したい』という形です。

事実と要望が混ざると、解決策が狭くなります。事実を先に示せば、システム会社から別の方法を提案してもらえる可能性があります。

現場に戻すときは、専門用語を減らす

システム会社からの回答には、仕様、連携、マスタ、権限、バッチ処理などの言葉が出ます。そのまま現場へ返すと、内容より難しさが先に伝わることがあります。

現場へ戻すときは、『作業はこう変わります』『ここは今まで通りです』『ここだけ確認が残ります』という言い方に変えます。相手の仕事に置き換えることで、納得感が出やすくなります。

ヒアリング後の確認を怠らない

聞いた内容をもとに要件をまとめたら、できれば現場へ一度戻します。『この理解で合っていますか』『この条件なら困りませんか』と確認するだけでも、後からのズレを減らせます。

総務が中に入る場合、聞いたつもり、伝えたつもりが起きやすいです。短い確認を挟むことで、現場・総務・システム会社の認識をそろえやすくなります。

現場の言葉を残しておく

要件に直す前の現場の言葉も、できるだけ残しておきます。『ここが面倒』『この確認が怖い』『いつもここで止まる』という言葉には、数字や仕様だけでは見えない実感が入っています。

後から社長やシステム会社へ説明するときも、現場の言葉があると伝わり方が変わります。単なる機能追加ではなく、なぜその改善が必要なのかを説明しやすくなります。

できることと決まったことを混同しない

システム会社から『技術的にはできます』という回答が来ても、それがすぐ採用されるとは限りません。費用、時間、運用変更、社内説明が必要だからです。

現場へ戻すときは、『できる可能性があること』と『実際に進めること』を分けて伝えます。ここを混同すると、期待だけが先に広がり、後で調整が難しくなります。

管理職同士の確認も入れる

基幹システムの変更は、担当者だけでなく部署の管理職にも影響します。現場担当者が便利だと思っても、部署全体のルールや責任範囲から見ると別の問題が出ることがあります。

実務では、担当者の声を聞いた後、部署の管理職にも確認を入れると安定します。現場の細かさと管理職の全体視点を両方持つことで、要件が偏りにくくなります。

ヒアリング結果は小さな合意に分ける

大きな改修では、全部が決まってから合意を取ろうとすると時間がかかります。入力項目、警告条件、帳票、運用ルールなど、論点を小さく分けて確認すると、関係者も判断しやすくなります。

小さな合意を積み重ねると、後から『そんな話だったか』というズレを減らせます。総務が中に立つ場合は、この細かい合意形成が地味ですが大切です。

聞く順番にも気を配る

最初に反対が強い人へ聞くと、全体の議論が重くなることがあります。一方で、最後まで聞かないと不信感につながることもあります。誰から聞くか、どの順番で確認するかも、現場調整の一部です。

実務では、まず業務の流れをよく知る人に確認し、次に管理職、最後に影響が大きい周辺部署へ広げると進めやすいことがあります。会社の人間関係や業務の流れに合わせて、聞き方を調整します。

ヒアリングは、質問票を配れば終わるものではありません。相手の表情、言いよどみ、何度も出る言葉にもヒントがあります。そこを拾えるのは、社内の温度感を知っている総務が中に入る強みです。

また、現場が本当に困っていることは、最初から整理されて出てくるとは限りません。話を聞きながら、これは入力の問題なのか、確認の問題なのか、責任分担の問題なのかを分けていくことで、要件が実務に近づきます。

このひと手間を省くと、後で仕様確認や追加説明が増えます。最初の聞き方を丁寧にすることは、遠回りに見えて、改修全体の時間を短くするための準備でもあります。

現場ヒアリングのチェックリスト

  • 最初に困りごとと目的を聞く
  • 現場の言葉を、業務の流れに戻して整理する
  • システム会社へは現場の声と総務案をセットで渡す
  • テスト段階で現場に見てもらう
  • 聞いた内容と判断理由を記録に残す

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よくある質問

Q
現場の要望はどこまで聞くべきですか?
A

まずは幅広く聞きます。ただし、実装するかどうかは費用、仕様、会社全体の目的を踏まえて整理します。

Q
システム会社の質問をそのまま現場へ渡してはいけませんか?
A

渡してよい場合もありますが、専門用語が多いと現場の負担になります。総務が目的を理解し、答えやすい質問に直すと精度が上がります。

Q
意見が強く出たときはどうすればよいですか?
A

まずは先入観なく聞きます。その後、目的、費用、実現性を整理し、できる案と難しい理由を分けて返すと話が進みやすくなります。

まとめ

基幹システム改修の現場ヒアリングは、ただ質問する仕事ではありません。現場の困りごとを受け止め、業務の流れに戻し、システム会社へ伝わる形に整える仕事です。

現場の負担を減らしながら必要な情報を集めることができれば、システム改修は押し付けではなく、会社全体の改善として進めやすくなります。

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